~登場人物~

・昭島 翔太(Author:クロノス)
男性・27歳・闇医者(無免許)

・坂本 太郎(Author:mo-ry)
男性・32歳・警察官(巡査)

・渠上 淳(Author:atsushim)
男性・31歳・ハッカー

・堀 砂川(Author:黒)
男性・22歳・ギャング

・渡会 はじめ(Author:TOM)
男性・26歳・医者(警察病院勤務)


≪プロローグ1≫

8月中旬。
昼は太陽が照り、焼けるように熱く、夜は蒸し暑い。
その蒸し暑さの中、立川のとある裏路地を1人の男が、人を担いで歩いていた。時刻はすでに深夜2時を回っていた。

地を擦るような長く太いジーンズ、肘を超す長さのTシャツを着た男。
明らかにガラの悪いその男は裏路地にある一軒の薄暗い明りのついた家の戸を叩く。

「先生!ツレが変なんだ!ちょっと診てくれ!」

建物からは反応がない。
男は戸を叩き続ける。しばらく叩いていると中から白衣を纏った小柄な男性が出てくる。

「なんだ、堀。うるせぇな。今何時だと思ってやがる。」
「先生、いるならすぐ出てきてくれよ!コイツの手が変なんだ!」
「めんどくせぇ。とにかく中に入れ。」

と白衣の男は言った。
中はやはり薄暗く、そして薄汚れており、先生と呼ばれる男がいるような場所には到底思えない。
ガムテープで補修された手術台のようなもの、空き缶の積まれたデスク。
その横の作業台には怪しげな薬品のビンと年季の入った医療道具の数々。
先生と呼ばれている男は免許の無い医師、昭島翔太。

「台に寝かせろ。で?何が変なんだ?」
「コイツの指先だよ!なんか透けてんだよ!」

台に寝かされた男の指先は、向こうが透けて見え、影のような靄がかかり、手首から先全体が霞がかっていた。

「…なんだこりゃ…。初めて見るな。この道に入って5年ほどだがこんな患者は初めて見るな…。」
「今は寝てるのか気を失ってるのかわかんないけど…と、とにかく治してやってくれよ!」
「…。」

昭島はしばらく黙りこくったあと、ゆっくり口を開く。

「治せるとは思えないが、やってやる。しっかり金もとる。とりあえず前金で10万。治療が終わったら100万。コイツのことで知っている範囲ですべて話せ。以上のことがすべて飲めるなら、やれるだけのことは…やってや…いや、うーん…てかこれ治るのか?」
「金なら払うから!頼む!頼れんのが先生しかいないんだよ!」
「わかった、わかったから静かにしろ。ったく、ムチャ言いやがって…。治せる確率は0.000000000001%くらいだし、多分これ医学関係ねぇし、もう霊媒師とかに診てもらえってレベルだけどな。クワガタのために金はほしいから、いろいろ調べてやるよ。」
「クワガタ?」
「おう、昆虫だ。」
「好きなのか?」
「まぁな。
 とりあえずこいつの名前とか、職業とかそーゆーの全部言え。」

と言って紙とペンを取り出す。

「名前は生田 武士(イケダタケシ)。俺とタメ。仕事はコンビニでフリーターやってて、同じチームのツレだよ。」
「チームってのはあの、不良軍団のことか?」

堀は黙って頷く。

「なんか心霊スポットなんか怖くねぇって言って、一人で行って帰ってきたら様子が変でさ。んで倒れちまったから連れてきた。」
「もう何がなんだかわからんが、こうゆうのは寺とかに隔離されるやつなんじゃないのか?」
「わかんねぇ。」

昭島が無言で頭を掻き、唸りを上げて、首を傾げて悩んでいると、生田が目を覚まし、自分の置かれている、なんとも理解し難い状況に悲鳴を上げ暴れ始めた。

「おい武士!落ち着けって!無理かもしんねーけど!」

と堀が組み付く。
しかし生田はそれを振りほどき、「あんた医者だろ!どーなってんだこれ!早くこれを治してくれ!」と昭島に対して吠える。

「うるせぇし面倒くせぇ。少し静かにしとけ、タコ。」

そういうと昭島はおもむろに注射器を生田の首に突き立て、中の液体を注入した。
生田は糸の切れた人形のように崩れ落ちる。

「…!先生まさか殺したのか…?」
「麻酔。それもアホみたいに強力で象とかエドモンド本田でも24時間くらいは目覚めねぇやつ。ワンチャン…死ぬ。」
「死ぬって…マジかよ!」
「安心しろ、冗談ではないが、死んだらまぁ…金はいらん。」

手術台に生田を乗せ、二人の間に沈黙が続く。
生田の手は手首のあたりで影のように透けてきていた。

~♪♪~♪~

堀のスマホの着信音が静寂を破る。
画面には“渠上さん”と表示されている。堀は一瞬、ギョっとした表情したあとに電話に出る。

「お疲れ様です!ミゾさん!」
「お~う、堀かー?今大丈夫かー?」
「大丈夫っす!」
「この前の仕事の金、まだー?」

決して怒っている口調ではなく、やわらかい口調で溝上が続ける。

「急ぎではねぇんだけどさー、忘れてんのかなーって思ってさー。」
「あ、す、すいません!すぐも持っていきます!!」
「え?なに、今から来んの?別にいいけど。」
「すぐ向かいます!」

堀の顔には焦燥が見える。
電話を切った堀は、財布から10枚の諭吉を昭島に渡す。

「先生、明日の朝来るからそれまで武士をよろしく!」

と言って早足に昭島の住処を出ていく。

「あ、おい!こんなイカれたヤツの相手を俺一人にって…、あの野郎…。」

昭島はそう吐き捨てると、拘束具のようなもので生田の胴体を拘束し、点滴のようなものを取り付け、椅子にかけ、外を眺める。

「…はぁ。とんでもねぇな、畜生。…寝るか。」

昭島は診療室を後にし、自室へと戻っていった。
その頃、堀は渠上の住む六本木へとバイクを飛ばしていた。

時刻は3時半を過ぎた頃、堀は渠上の住むマンションの一室に入っていった。

「すいません!遅くなっちゃって。」

堀は財布から札束を渡す。
ソレを受け取った柔和な顔つきの男は渠上 淳、裏の世界では名の知れたハッカーだった。

「…17、18、19、20。ん。しっかりと。」
「ほんとすいませんでした。」
「あー急かしたようになってごめんなー。そんなつもりはなかったから安心してくれな?まぁ、バックれたら、お前の個人情報が世界に拡散されるだけだ、心配するな。」

と笑いながら渠上は話す。

「いや、それは困るっすよ…。」

と苦笑いしながら堀が答えた。
その表情は暗く、なにやら不安に駆られているようだった。
堀の異変、異常に気付いた渠上は、

「…どうした?なんかあったのか?
 金返しとくか?俺は急いでねぇし、困ってんなら待つぞ?」

と真剣な顔で、穏やかな口調で話しかけた。
堀は意を決し、友人の身に起きた、謎の現象について話した。

「ほーぅ。そいつぁ面白そうだなー。幽霊の祟りとかなのかね。興味が湧いてきたな。
 よし!俺も微力かもしれんが協力するから、その友人とやらの身に起きてる異変をこの目で確かめさせてくれよ。」
「それは構わないっすけど、巻き込まれたりするかもしんねぇっすよ?それに金とかも…」
「いいよー、ロハで。後輩が困ってるんだ、これでも年上だしなー。なんかあったら自己責任!ってことならいいってことだろ?いいよいいよ、どーせヒマだし、こんな機会滅多にないだろうし。つき合わさせてくれな?で、場所はどこにいるんだ?」
「ありがとうございます!立川の胡散臭い医者に預けてあります。」
「立川か…。もう4時だし、とりあえず今日は泊まってけ。んで朝向かえばいいしょ?」
「そっすね、先生にも朝行くと言いましたし。じゃあお邪魔になります!」

二人は就寝の準備をすると、すぐに床に就き寝息を立て始めた。


≪プロローグ1~終~≫

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